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制作ディレクションの型|修正ラリーを止めるオリエンの3項目と品質基準6論点
最終更新日 2026年9月8日(Tue)
記事作成日 2026年9月8日(Tue)

上がってきた素材を見て「なんか違う」と言う。何が違うかは説明できない。制作者は推測で直す。また違う。外注・クリエイター制作で最も工数を溶かしているのが、この修正のラリーです。原因はほぼコミュニケーション不足にあります。オリエンで渡すべき3つの共通認識、事前に決めておくOK/NGの6論点、指示の粒度と確認工数のトレードオフ、そして月何本こなせるかを先に測るワークフロー設計まで、ラリーを構造的に減らす型を整理します。
目次
執筆:リデル株式会社 SNSマーケティングチーム
SNS・コミュニティマーケティング専門企業。上場企業を含む7,000社超の支援実績をもとに、
SNS運用・インフルエンサー施策の現場ナレッジを発信しています。
修正ラリーはなぜ起きるのか|工数を溶かす最大のボトルネック
上がってきた素材を見て、「なんか違う」と言う。何が違うかは説明できない。制作者は推測で直す。また違う。3回目のラリーで企画ごと作り直しになる。外注・クリエイター制作の現場で最も工数を溶かしているのが、この一連の流れです。
この記事では、SNSのクリエイティブ制作を外部に発注するときのディレクションを、オリエンで渡すもの・品質基準の決め方・ワークフローの組み方に分解して整理します。制作物のクオリティを上げる話ではなく、同じクオリティに到達するまでの往復を減らす話です。
①「なんか違う」の3回目で企画ごと作り直しになる
最大のボトルネックは修正のラリーです。1クリエイティブに3〜4回ラリーし、「なんか違う」で企画ごと作り直す。これが一番の無駄になります。
1回のラリーで消えるのは、制作者の作業時間だけではありません。確認する側の時間、次のカットに進めない待ち時間、そして「何を直せばいいのか分からない」という制作者側の消耗も同時に発生します。3〜4回積み上がれば、当初の見積もりからは完全に外れます。
②原因は制作者の能力ではなくコミュニケーション不足
ラリーが続くとき、原因を制作者のスキルに求めたくなります。しかし実際の原因はほぼコミュニケーション不足です。伝える側が意思をきちんと伝えていないか、制作者側が汲み取れていないか、そのどちらかです。
つまり、制作者を変えても解決しません。同じ渡し方をすれば、次の制作者とも同じラリーが起きます。外注・クリエイター制作で最も重要なのは共通認識を持つことであり、それはオリエンの力と制作者のキャッチアップ次第で決まります。
③最もよくないのは、決めきれないまま渡すこと
最もよくないのは、「なんかダメ」「なんか違う」と言語化できないまま、運用担当者が決めきれずに制作者へ渡すことです。これは必ず手戻りになります。
渡す前に自分の側で決めきる。決めきれないなら渡さない。この一線を引くだけで、ラリーの回数は変わります。判断を保留したまま制作に進めても、保留した分は必ず後から返ってきます。
オリエンで渡すべき3つの共通認識
伝えるべき共通認識は3つに集約されます。この3つが揃っていないオリエンは、必ずどこかで手戻りを生みます。

逆に言えば、渡すものは3つで足ります。項目を増やすほど良いオリエンになるわけではなく、この3つが具体的に書かれているかどうかが分かれ目になります。
①アカウントの目的・世界観・誰に当てたいか
このアカウントが何を目指し、誰に届けるものかを渡します。ここが抜けると、制作者が想定読者を独自解釈し、トーンがずれます。
制作者は渡された情報の範囲で最善を尽くします。誰に当てるかが書かれていなければ、制作者自身が「良い」と思う相手に向けて作るしかありません。上がってきた素材が悪くないのに刺さらない、という状態はここから生まれます。アカウント全体のトーンや見え方の揃え方はトンマナ・世界観・グリッド設計の考え方も併せて確認してください。
②クリエイティブの何がOKで何がNGか
許容できるラインと、絶対に避けたい表現を渡します。ここが抜けると、上がってきてから初めてNGが判明し、ラリーが始まります。
NGは、上がってきた素材を見た瞬間には全員が分かります。問題は、それが発注時点では誰も書いていなかったことです。事前に書き出す手間と、上がってから作り直す手間を比べれば、どちらが安いかは明らかです。具体的な論点は本記事の「品質基準のOK/NG」で6つに整理します。
③ブランド・商品の思い・特徴
なぜこの商品なのか、どこを見せたいのかを渡します。ここが抜けると、商品が単なる小道具として撮られます。
商品が画面に写っていても、見せたいポイントが写っていなければPRとしては機能しません。商品の伝え方そのものを設計し直す視点は商品の良さが伝わらない投稿の直し方でも扱っています。
| 必須項目 | 中身 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
| アカウントの目的・世界観・誰に当てたいか | このアカウントが何を目指し、誰に届けるものか | 制作者が想定読者を独自解釈し、トーンがずれる |
| クリエイティブの何がOKで何がNGか | 許容できるラインと、絶対に避けたい表現 | 上がってきてから初めてNGが判明し、ラリーが始まる |
| ブランド・商品の思い・特徴 | なぜこの商品なのか、どこを見せたいのか | 商品が単なる小道具として撮られる |
言語化できない要望をどう伝えるか|参考画像とイメージの使い方
オリエンの3項目を埋めようとすると、必ず「言葉にならない部分」が残ります。世界観、空気感、生っぽさ。ここを言葉だけで押し切ろうとすると、解釈の幅がそのままラリーになります。
①言語化できないものは視覚的な参考に落とす
言語化できないものは、言葉や視覚的な参考(画像・参考イメージ・ポートフォリオ的なもの)に落とし込みます。参考画像を出さず、言葉だけで世界観を伝えようとするのは失敗パターンの一つです。
参考は「これと同じものを作ってほしい」という指示ではありません。目標としている見え方の位置を、両者が同じ場所に置くための道具です。だからこそ、良い例だけでなく「これは違う」という例も一緒に渡すと精度が上がります。
②「どんなものをどう作りたいか」の共通認識を先に作る
どんなものを目標にどう作りたいか、その共通認識を必ず作ります。順番が重要で、共通認識を作るのが先、修正指示はその後です。
上がってきたものが違うのに、何が違うか説明できない。その状態で差し戻すのが最も手戻りを生みます。差し戻す前に、まず参考に落とし込む。ここで一度立ち止まる方が、結果として早く着地します。
指示の粒度をどこまで細かくするか|確認工数とのトレードオフ
台本・絵コンテ・参考の細かさは企業ごとに任せる領域で、正解はありません。ただし、細かくするほど確認工数が増えるので、どこまで許容するかを先に決めておきます。決めずに走ると、確認する側が先に潰れます。

①構図一つでも擦り合わせの幅は広い
構図一つを取っても、擦り合わせの幅は広いです。参考画像で擦り合わせる、仮撮影する、背景色をアバウトに決める、買う物の色味・小物まで全部リストアップする。どこまでやるかは企業の判断になります。
ショート動画の場合は、台本やカットごとのイメージまで詳細に詰めることもあります。尺と構成の合意が必要になるためで、その分だけ確認工数も上がります。
| 粒度 | やること | 確認工数 |
|---|---|---|
| 粗い | 背景色をアバウトに決める程度 | 低い。制作者の裁量が大きい |
| 中 | 参考画像で構図を擦り合わせる | 中程度 |
| 細かい | 仮撮影を挟む | 高い |
| 最も細かい | 買う物の色味・小物まで全部リストアップする | 最も高い |
| ショート動画の場合 | 台本やカットごとのイメージまで詳細に詰めることもある | 高い(尺と構成の合意が必要なため) |
②最初は厚く、呼吸が合ってから減らす
最初の数ヶ月はしっかり擦り合わせます。呼吸が合えば徐々に確認項目を減らします。最初から粗い粒度で始めると、共通認識ができる前にラリーが発生します。
粒度は固定するものではなく、関係の成熟度に合わせて動かすものだと考えてください。初月と半年後で同じ枚数の参考画像を用意している必要はありません。
品質基準のOK/NG|事前に決めておく6論点
OK/NGは結局、そのブランド・企業・個人が許容できるラインでしかありません。絶対的な基準は存在しません。だからこそ事前に決めておく必要があります。論点は次の6つです。
①作り込み・業種固有の見え方・他社製品の写り込み
作り込みの範囲では、テクスチャー・色の見せ方・ライティングまで詰めるか、制作者に任せるかを決めます。業種固有の見え方では、フード系なら食器・キッチンの見え方までこだわるかを決めます。
他社製品の写り込みは、揉めやすい論点です。他社製品が一切写ってはいけないのか、自社商品がフィーチャーされ後ろにボケる程度なら良いのか。ここは事前に線を引いておかないと、上がってから判断することになります。
②品質の方向・ライフスタイル感・許容できる乱れ
求める品質の方向は、雑誌のような作り込みか、インフルエンサーが撮ったような生っぽさ・リアルさか。許容できる乱れは、クリエイティブ内のゴミ・シワ・シミをどこまで許容するかです。
特にライフスタイル感は企業・人によって感覚が大きくずれます。リアルな生活感を求める人もいれば、リアルすぎはNGでスタイリングを組む人もいます。ここを言語化せずに発注すると、両者とも自分が普通だと思っているぶん、ずれに気づくのが遅れます。
| 論点 | 決めておくこと |
|---|---|
| 作り込みの範囲 | テクスチャー・色の見せ方・ライティングまで詰めるか、制作者に任せるか |
| 業種固有の見え方 | フード系なら食器・キッチンの見え方までこだわるか |
| 他社製品の写り込み | 他社製品が一切写ってはいけないのか、自社商品がフィーチャーされ後ろにボケる程度なら良いのか |
| 求める品質の方向 | 雑誌のような作り込みか、インフルエンサーが撮ったような生っぽさ・リアルさか |
| ライフスタイル感 | リアルな生活感を求めるか、リアルすぎはNGでスタイリングを組むか |
| 許容できる乱れ | クリエイティブ内のゴミ・シワ・シミをどこまで許容するか |
ワークフロー設計|月何本こなせるかを先に測る
まず重要なのは、確認者と制作者が月何本までこなせるかを把握することです。ここを測らずに本数を決めると、途中で必ず詰まります。

①小さい方が実質のキャパシティになる
確認者が月何本まで確認できるか、制作者が月何本まで制作できるか。この2つのうち小さい方が、実質のキャパシティになります。
- 確認者が月何本まで確認できるか
- 制作者が月何本まで制作できるか
- 上記2つのうち小さい方が、実質のキャパシティになる
- 制作本数が多いほど苦しくなる。本数を先に増やさない
制作側のキャパシティだけを見て発注すると、確認が滞留します。確認者のキャパシティを測らずに本数を決め、確認が滞留するのは失敗パターンの一つです。
②最初はミニマムから、体制が整ってから拡大する
最初はミニマムから始めます。週1〜2回投稿できれば良いくらいで始め、体制が整ってから拡大します。順序を逆にして、本数を先に増やしてから擦り合わせようとすると破綻します。
限られた工数で運用を回す前提の組み方はSNS運用を週1時間で回す方法でも整理しています。
| 時期 | 擦り合わせ | 本数 |
|---|---|---|
| 最初の数ヶ月 | しっかりコミュニケーションを取り共通認識を作る。参考画像・仮撮影まで使う | ミニマム。週1〜2回投稿できれば良いくらい |
| 呼吸が合ってから | 確認項目を徐々に減らす | 体制が整ってから拡大する |
③発注前チェックの型(6ステップ)
ここまでの内容を、発注のたびに使う順序に組み直します。この順で埋まっていれば、ラリーは構造的に減ります。
- アカウントの目的・世界観・誰に当てたいかを文章にする
- クリエイティブのOK/NGを、6論点(作り込みの範囲/業種固有の見え方/他社製品の写り込み/求める品質の方向/ライフスタイル感/許容できる乱れ)で書き出す
- ブランド・商品の思い・特徴を伝える
- 言語化できない部分を、参考画像・参考イメージ・ポートフォリオ的なもので補う
- 粒度をどこまでにするかを決める(決めた粒度に応じて確認工数を見積もる)
- 確認者と制作者の月間処理可能本数を確認し、発注本数を決める
担当者が替わってもこの型が残っていれば、擦り合わせをやり直す範囲は小さくなります。引き継ぎの設計は担当者交代でも崩れない運用も参照してください。
よくある質問
現場で繰り返し聞かれる3点をまとめます。いずれも「先に決めておく」で解ける論点です。
①オリエンをどこまで細かく書くべきか
粒度は企業ごとに決めます。細かくするほど確認工数が増えるので、どこまで許容するかを先に決めておきます。構図一つでも、参考画像で擦り合わせる/仮撮影する/背景色をアバウトに決める/買う物の色味・小物まで全部リストアップする、と幅があります。ショート動画なら台本やカットごとのイメージまで詳細に詰めることもあります。最初の数ヶ月はしっかり擦り合わせ、呼吸が合えば徐々に減らします。
②上がってきたものが違うが、何が違うか説明できない
その状態で戻すのが最も手戻りを生みます。言語化できないものは、言葉や視覚的な参考(画像・参考イメージ・ポートフォリオ的なもの)に落とし込みます。どんなものを目標にどう作りたいかの共通認識を作るのが先で、修正指示はその後になります。
③月に何本まで発注していいか
確認者と制作者が月何本までこなせるかを把握するのが先です。制作本数が多いほど苦しくなります。最初はミニマムから、週1〜2回投稿できれば良いくらいで始め、体制が整ってから拡大します。
結局、オリエンの力と制作者のキャッチアップ次第です。仕組みで解決する部分と、関係構築で解決する部分の両方があります。最初の数ヶ月にコミュニケーション量を集中的に投下するのが、結果として最も安く済みます。