コラム

コスメのSNS運用|薬機法の言い換えとビフォーアフター撮影の条件、保存率の目安まで

最終更新日 2026年9月17日(Thu)

記事作成日 2026年9月17日(Thu)

薬機法チェックが属人化していると、表現の差し戻しが往復して公開が遅れます。NGワードの機械チェックを運用に組み込み、化粧品で表現できる56項目と、加工は明度とトリミングまでという上限を先に決める。美容・コスメのSNS運用で詰まらないための線引きを、KPIの目安まで含めて整理しました。

目次

執筆:リデル株式会社 SNSマーケティングチーム
SNS・コミュニティマーケティング専門企業。上場企業を含む7,000社超の支援実績をもとに、
SNS運用・インフルエンサー施策の現場ナレッジを発信しています。

投稿が止まる原因は、薬機法チェックの属人化

テクスチャーの寄りは撮れている。仕上がりも綺麗に出ている。それでも投稿が出せない。美容・コスメのSNS運用で最も多い詰まり方が、この「表現でストップがかかる」状態です。

原因は制作力ではなく、表現チェックが担当者の感覚に依存していることにあります。判断がぶれるから差し戻しが増え、差し戻しが往復するから公開が予定から遅れる。ここは個人のリテラシーを上げて解く領域ではなく、仕組みで潰す領域です。

①個別の投稿はOKでも、過去を遡ると違反表現が散在する

1本ずつ見ていると問題なく見えます。ところが過去投稿を遡ると、違反表現が点々と残っている。判断がぶれた履歴がそのまま公開状態で蓄積されているためです。後から発掘されるリスクは年々高まっているので、半年に1回、過去2年分の投稿を遡って表現チェックする運用を組み込みます。

②NGワードリストを作り、全投稿を機械チェックにかける

やることは単純です。「治る」「効く」「痩せる」といったNGワードのリストを作り、投稿前に機械的に照合する。判断を人から仕組みへ移すだけで、差し戻しの往復が消えます。あわせてNG表現と代替表現のペアを社内で蓄積すると、新入社員でも安全な投稿が書ける状態になります。

NGになる言い方 置き換えの方向
肌がきれいになった 肌が整った/うるおいが感じられる
肌トラブルを防げます 肌にうるおいを与えます
シミが消える/ニキビが治る 化粧品の効能効果範囲外。使わない
アンチエイジング 化粧品では原則NG
ファンデのもちが良くなる メイクのり訴求として化粧品で許容範囲

③毎月まわすチェックリストに落とす

リストを作って終わりにせず、点検の周期まで決めます。以下を運用サイクルとして固定すると、判断のぶれが再発しません。

  • 全投稿で薬機法NGワードリスト(治る・効く・痩せる等)を機械チェックしているか
  • ビフォーアフター投稿に個人の感想の表記を必ず入れているか
  • 成分訴求を厚労省の表現範囲に沿った言い回しに統一しているか
  • PR投稿にPR・提供の表記を冒頭へ明記しているか(ステマ規制対応)
  • インフルエンサー投稿は契約書で表現範囲を事前合意しているか
  • 月次でクレーム・問い合わせから表現リスクを棚卸しているか

プラットフォームの優先度|3媒体の役割を分ける

美容・コスメは商品の使用感・テクスチャー・仕上がりがビジュアル化しやすい業種です。だからこそ全媒体に手を出しやすく、全部やって全部が薄くなります。役割を分けて順番を付けます。

優先度 プラットフォーム 理由
第1 Instagram ビジュアル訴求とインフルエンサー文化が最も成熟している
第2 TikTok Z世代の購買起点として急成長。リール素材の二次利用が効く
第3 YouTube Shorts ハウツー系の補完。検索流入が長期的に積み上がる

①主戦場はInstagram、素材を二次利用してTikTokへ

Instagramを主戦場に据え、そこで作ったリール素材をTikTokへ回す。撮影と編集の工数を増やさずに接点を増やせる形です。ハウツー系はYouTube Shortsに置くと検索流入が長期で積み上がります。

②ターゲットと季節性を前提に置く

中心は10〜50代女性で、男性向けは別軸として急成長しています。需要は夏の日焼け・汗対策、冬の乾燥・くすみケアで動くため、季節で企画の軸が入れ替わることを前提に年間を組みます。他業種での組み方はアパレル・ファッションのSNS運用も参考になります。

鉄板コンテンツ7型|内容と形式をセットで持つ

毎回ゼロから企画を考えると続きません。内容だけでなく形式まで型に含めて持ち、7型をローテーションします。

内容 適した形式
1 テクスチャー・色味の寄りカット リール(手元アップ)
2 使用前後の比較(薬機法配慮) カルーセル
3 メイクハウツー・スキンケア手順 リール(15〜45秒)
4 成分・処方の解説 カルーセル(教育型)
5 使用シーン・ライフスタイル提案 フィード
6 お客様の声・口コミ紹介 カルーセル+ストーリーズ
7 季節限定・新商品の告知 リール+フィード

①寄りとハウツーはリール、比較と成分はカルーセル

テクスチャーの寄りカットとメイクハウツーは動きで伝わるのでリールに割り当てます。使用前後の比較と成分解説は読ませる情報量が要るのでカルーセルに置きます。形式を型に含めておくと、企画会議で「どう作るか」を毎回議論せずに済みます。

②成分解説は開発部の一次情報から書く

成分解説が浅いと見透かされ、感度の高い消費者層から離反されます。開発部・処方担当者の一次情報を編集して発信する仕組みを作っておきます。商品の魅力が伝わらないときの直し方は商品の良さが伝わらない投稿の直し方で整理しています。

③戦略は4パターン。どれを主軸に置くかで体制が変わる

コスメSNSの戦略は4パターンに整理できます。主軸をどれに置くかで、必要な人数も外部リソースの使い方も変わります。

パターン 内容
界隈マーケティング 美容関心層の濃いマイクロインフルエンサーを多数アサインし、界隈で語られる状態を作る
使用感訴求 使った時の感覚とライフスタイルへの溶け込みを中心に置く
ハウツー 化粧水→美容液→クリームの順序、メイク手順、季節別ケア
メイクのり訴求 ファンデのもちが良くなるは化粧品で許容範囲

界隈マーケティングで最重要なのは、界隈の中で自然に語られる空気です。少人数の濃いコミュニケーションを基盤に、ナノからマイクロのインフルエンサーと長期関係を構築します。広告というより友達の紹介に近い感覚を醸成できるかが分かれ目になります。

ビフォーアフターは一律NGではない|線引きと撮影条件

ビフォーアフターは効果が高い表現です。同時に薬機法と景品表示法が両方効きます。使えないのではなく、条件を満たせば使える。守る点は4つです。

  • 個人の感想・使用イメージと明記する
  • 撮影条件(光量・角度・距離)を完全に揃える
  • 効能効果の表現ではなく、使用前と使用後の見た目を語る
  • 加工・補正は最小限にし、加工した場合は明記する

ビフォーアフターの判断は、対象で変わる

①メイク変化とスキンケアで判断が変わる

線引きは対象で変わります。メイク変化のビフォーアフターは許容範囲です。一方、スキンケアによる肌質変化は薬機法リスクが高く、個別に専門家確認が必要になります。要件を満たせないなら、その企画の運用を止める判断も選択肢に入れます。

②加工は明度とトリミングまで。肌補正・輪郭補正は禁止

加工の上限をルールとして先に決めます。明度とトリミングまでに限定し、肌補正・輪郭補正は禁止します。見栄えを優先してリアリティを失うと、加工バレとしてSNSで拡散されます。撮影条件を揃えるのは法務対応であると同時に、信頼を守る作業でもあります。

③化粧品で表現できるのは限定的な56項目のみ

化粧品で表現できるのは限定的な56項目のみです。医薬部外品・医薬品では別ルールが適用されるため、必ず分けて運用します。「治る」「効く」「シミが消える」「アンチエイジング」は、化粧品では言った時点で薬機法違反になります。

業種別KPIの目安と、評価は90日〜6ヶ月で見る

相場観がないと、伸びているのか止まっているのかの判断ができません。2026年時点の業種平均としての参考値を置きます。

指標 目安
投稿頻度 フィード週3〜4本、リール週2〜3本、ストーリーズ毎日
保存率 6〜10%(ハウツー系は12%超えを狙う)
プロフィール遷移率 4〜7%
ECサイト遷移率 1〜3%
UGC月間獲得数 フォロワー1,000人あたり3〜5件

コスメの効果は、30日では見えない

①投稿後30日のEC売上だけを見ると過小評価になる

化粧品のEC売上は、投稿経由のクリック数とCV率だけでは測れません。投稿後30日のEC売上だけを見ると過小評価になります。指名検索数の変化とブランド名の言及数が中長期で効くため、評価期間は90日〜6ヶ月で置きます。

②報告の型を先に決めておく

評価期間を長く取るほど、途中の報告で「効いているのか」を説明する力が要ります。数値を並べるだけの報告では止まってしまうため、報告の型は事前に用意しておきます。組み立て方は経営層へのSNS報告にまとめています。

③運用体制は3名・週次180〜240分が目安

体制の目安を決めておくと、こなせない量を引き受けずに済みます。マーケ担当1名・撮影担当1名・薬機法チェック担当1名の3名体制で、週次稼働は180〜240分(撮影90分・編集60分・薬機チェック30分・分析30分)。必要スキルは商品撮影・色管理・薬機法の基礎知識で、インフルエンサーキャスティングは外注または専門会社を活用します。

4法が同時に効く構造と、陥りやすい5つの罠

この業種の最大の構造リスクは、効く法律が薬機法だけではないことです。薬機法・景品表示法・ステマ規制・特定商取引法が同時に効きます。

制約 内容
薬機法×化粧品 美肌・シミが消える・ニキビが治る・アンチエイジングは原則NG
景表法×最上級表現 日本初・業界No.1・圧倒的人気は根拠なしの最上級表現でNG
発信者ラベル制約 薬剤師開発・看護師おすすめは効能効果暗示と組み合わさるとNG
ステマ規制 対価関係(無償提供含む)があればPR・提供・タイアップラベルが必須

①ステマ規制は2023年10月施行。広告主が処分対象になる

ステマ規制は2023年10月施行です。表記を欠くと広告主が処分対象になります。医師監修の表記も、監修実態と監修範囲を明示しないと景表法違反になります。判断の基準はステマ規制の判断基準に整理しています。

海外コスメを扱う場合は確認が1段増えます。中国製・韓国製コスメは成分と安全性への不安をフォロワーが持ちやすいため、日本での法定許可と第三者検証の明示を投稿に組み込みます。中国コスメは薬機法以前に、化粧品として日本で販売可能かという製造販売届出の確認が先になります。

②5つの罠は、症状と対処をセットで持つ

症状 対処
NG表現の蓄積 個別投稿は問題なく見えるが過去を遡ると違反表現が散在 NGワードリストを作り、投稿前に機械的にチェックする
インフルエンサー投稿の違反 起用先が効能効果を断定し、ブランド側に責任が及ぶ 契約書にNG表現リストを別紙添付し、下書きチェックを必須化する
ステマ規制違反 PR・提供の表記なし投稿が拡散し、後から指摘される 契約時に表記の位置と表現を統一指示し、投稿後もチェックする
加工バレ 使用後写真の過度な加工が見抜かれて拡散される 加工は明度・トリミングまで。肌補正・輪郭補正は禁止する
成分知識の薄さ 成分解説が浅いと見透かされ、消費者層から離反される 開発部・処方担当者の一次情報を編集して発信する仕組みを作る

③そもそもSNSとの相性が悪いケースもある

すべての美容・コスメブランドにSNSが効くわけではありません。次の4つは前提から見直します。

  • 超ニッチな専門成分ブランド。マスSNSより専門メディアやBtoB営業が効率的
  • 医療用医薬品・処方薬。そもそも一般向け広告が原則禁止
  • 客単価が極端に高いラグジュアリーブランド。オープンSNSと世界観が衝突しがち
  • 開発・処方が他社頼みのOEMブランド。差別化軸が弱くSNSで埋没しやすい

美容業界ではSNS依存度を下げる戦略も増えています。自社ECとLINE公式アカウントで顧客と直接つながる構造のほうがLTVは高い。拡散を作る前に受け皿の設計を決める、という順序になります。人に送られる投稿の作り方はシェアされない投稿の直し方もあわせてご覧ください。

よくある質問

①「肌がきれいになった」という表現は使えますか?

化粧品の効能効果範囲外のため使えません。「肌が整った」「うるおいが感じられる」に置き換えます。「化粧水を毎日使えば肌トラブルを防げます」も範囲外で、「肌にうるおいを与えます」に置き換えます。

②ビフォーアフター写真は使えないのですか?

一律NGではありません。メイク変化のビフォーアフターは許容範囲、スキンケアによる肌質変化は薬機法リスクが高く、個別に専門家確認を挟みます。撮影条件は光量・角度・距離を完全に揃え、個人の感想の表記を入れます。

③ユーザーの口コミ(UGC)は再投稿してよいですか?

本人許諾、映り込んだ第三者の権利、口コミ内容自体の薬機法表現の3点を確認します。「効果絶大」というUGCをそのまま再投稿すると、ブランド側の責任になります。

④依頼していないのに紹介された投稿はどう扱いますか?

ブランドから依頼していない自然投稿(オーガニックUGC)は規制対象外です。ただし無償提供を含む対価関係があれば広告と判定されうるため、PR・提供の表記が必要になります。

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