コラム

【2025年施行】情報流通プラットフォーム対処法で企業SNS担当者が押さえるべきポイント

最終更新日 2025年7月4日(Fri)

記事作成日 2025年7月4日(Fri)

「情報流通プラットフォーム対処法の話題を目にしたけど、自社にはどの程度関係がある話なの?」と思っていませんか?

プロバイダ責任制限法が改正されて「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)となりましたが、法改正に関する情報が社内で行き渡っていないケースが少なくありません。

本記事では、情報流通プラットフォーム対処法の概要と、企業SNSの運用担当者への影響を詳しく解説します。まずは法律の全体像をつかみ、社内の体制を一緒に見直していきましょう。

 

情報流通プラットフォーム対処法とは?概要を解説

【基本情報】

  • 正式名称
    特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律
  • 通称
    情報流通プラットフォーム対処法、略して「情プラ法」
  • 改正前の法令
    「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法/プロ責法)を改正し、名称を変更
  • 公布
    2024年(令和6年)5月17日
  • 施行
    2025年(令和7年)4月1日 施行(現在運用中)

2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、これまでの「プロバイダ責任制限法」を大幅に改正した新しい法律です。まずは法律の基本的な枠組みを詳しく見ていきましょう。

 

施行の背景・目的

インターネット上には、SNSや動画サイトなど、情報発信や交流を行う場(プラットフォーム)が広く存在し、多くの人が日常的に利用しています。

しかし近年、こうした場で他者を傷つける書き込みや、他人の著作物を無断で使用する投稿など、権利侵害や誹謗中傷にあたる問題行為が目立つようになってきました。

このような背景を受けて、SNSや動画配信サービスといった大規模プラットフォームを提供する事業者にも、利用者を守るための一定の責任が求められるようになったのです。

今回の法改正では、従来の「プロバイダ責任制限法」が見直され、新たに「情報流通プラットフォーム対処法(通称:情プラ法)」として施行されました。

もともと「プロバイダ責任制限法」は、主にインターネット接続事業者(プロバイダ)に対する責任を定めた法律でしたが、今回の改正で、SNSなどのプラットフォーム提供者にも対応義務が拡大された点が大きな特徴です。

 

影響を受ける企業

主に影響を受けるのは、大規模プラットフォームを提供している事業者です。「大規模プラットフォーム」とは、日本国内で多くの人が利用しているSNSや動画配信サイト、掲示板などのことです。

X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube といったSNS・動画サイトの運営者や、大規模なWeb掲示板やコミュニティアプリの運営者が、主に当てはまると考えられています。

利用者がそれほど多くない個人サービスの運営者などは、法律の対象となる可能性は低いでしょう。しかし、判例などを参考に、どのような企業に責任が問われているのか引き続き注目する必要があります。

 

主な規定内容

情プラ法では、大規模プラットフォームの提供事業者に対し次のような対応を義務化しています。

①削除対応のルールづくり
利用者から投稿の削除要請が来たら、一定期間内に対応方針をはっきりさせて、利用者に連する

専門スタッフの配置
「侵害情報調査専門員」という担当者を決めて、総務大臣に届け出

運営状況の毎年報告
削除要請の数や実際の削除件数などを報告書として公開・総務省にも提出

削除判断基準の明示
どのような投稿を「違法」「権利侵害とみなして削除するのか、基準を利用規約やガイドラインで示し利用者に周知する

利用者同士のトラブル調整支援
プラットフォーム上で起きた権利侵害や誹謗中傷について、当事者同士の話し合いや解決をサポート

 

情報流通プラットフォーム対処法が企業アカウントに与える影響

ここからは、プラットフォーム内でアカウントを持って運用している企業に向けて、情プラ法の影響を詳しくご紹介します「自社のSNS運用にどんなリスクや義務変更が生じるのだろうか?」と気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.誹謗中傷・権利侵害への対応義務強化

これまで、誹謗中傷や著作権侵害といった指摘に対して、企業側は「削除するかどうか」を任意で判断していました。

しかし、法改正により、削除要請が届いた際には迅速な対応が求められ、放置することで企業側に法的リスクが発生する可能性が生じています。

 

2.プラットフォーム側とのやり取りが増加する可能性

プラットフォーム側(SNSなどの運営側)との連絡・調整業務が増えることが予想されています。

たとえば、想定されるのは以下のような対応です。

  • プラットフォーム側の「侵害情報調査専門員」とのコミュニケーション
  • 削除要否に関する意見照会や、対応状況の報告書の提出
  • 重大な違反や権利侵害があった場合の調査協力や削除対応

つまり、社内だけで完結していたSNS運用が、今後は外部との協議などを含む法対応業務になる可能性があるということです。

 

情報流通プラットフォーム対処法への対策として企業が行動すべきこと

プラットフォーム運営者から連絡があった場合、権利を侵害していると判断される投稿は、速やかに削除する必要があります。

とはいえ、投稿の準備や運用にかけたコストを考えると、そもそも削除要請を受けないに越したことはありません。

そこでここでは、削除要請を受けずに済むよう、企業が事前に対策できることをご紹介します。

1.プラットフォームごとの広告・投稿ルールを確認

どのような投稿・広告が禁止されるのか、プラットフォームごとに規約として決まっています。自社の投稿が規約違反とならないよう、プラットフォームが公式で定めるルールを確認しておきましょう。

例えば利用規約や、ガイドラインとしてルールが公開されている場合が多いです。

 

2.運用ルールの見直し

プラットフォーム側の規約に抵触したり、他者の権利を犯してしまったりすることがないよう、社内のSNS運用ルールを見直しましょう。

【ルールの見直し例】

  • 投稿前チェックリストの更新
  • 投稿や広告クリエイティブの社内確認フローの定義
  • デザイナーやライターへの発注内容の明確化

担当者が変わっても投稿の質を保てるよう、運用の仕方を標準化しておくと良いでしょう。

 

3.万が一の炎上対応・クレーム対応フローの強化

企業のSNS運用に対する監視の目は厳しくなっています。いざトラブルが発生した際に適切な対応をとれるよう、事前に社内体制を準備しておきましょう。

  • 炎上の発見をすぐに社内共有できるようモニタリングや連絡のフローを考えておく
  • 謝罪や投稿削除の必要性を誰がいつまでに判断するか決めておく
  • SNSトラブルに詳しい弁護士などに協力を求め顧問契約や相談体制を作る

特に炎上が発覚した際は、スピーディな初期対応が大切です。慌てず対応できるように行動指針をマニュアル化しておきましょう。

 

4.定期的な関係者教育

情プラ法のような新しい法規制に対応するには、関係者全体に最新情報を周知することが重要です。社内だけでなく、協力会社やパートナーも含めた包括的な教育体制を構築しましょう。

社内向けには、SNS担当者向けに「最新の法規制(情プラ法・景表法など)」「炎上対応事例」などのテーマで勉強会を開くのがおすすめです。

また、インフルエンサーと連携している場合はどはインフルエンサーにも教育したり、デザインを外注している場合は委託先にも情報共有したりと、関係先とも連携をとりましょう。

 

5.タイアップ先・委託先の選び方に気をつける

例えばタイアップ先のインフルエンサー選定では、フォロワー数だけでなく以下のようなポイントもチェックしてみてください。

  • 炎上歴や景品表示法に基づく適切な「PR」表記
  • 薬機法へのライティング対応
  • フォロワーとの普段のコミュニケーション
  • 過去の炎上・トラブル歴

タイアップ開始後もインフルエンサーの動向は注視し、問題があれば即座に指摘・修正を行う体制を構築しましょう。

 

情報流通プラットフォーム対処法に関するよくある疑問にお答え

「自社は小規模なアカウントだから関係ない」「過去の投稿は大丈夫」といった誤解も多く見受けられますが、実際にはどのような企業でも無関係ではありません。理解が曖昧になりがちな3つの質問を例に、よくある疑問にお答えします。

 

Q1:自分たちが小規模なアカウントでも対応は必要?

情プラ法で直接的な義務を負うのは、総務大臣が指定する大規模プラットフォーム事業者です。フォロワー数が少ない企業アカウントや個人事業主は、情プラ法による法的義務の対象外です。

しかし、だからといって企業側が何もしなくて良いわけではありません。小規模アカウントでも炎上や誹謗中傷のリスクは存在し、一度問題が発生すると信頼失墜や売上への悪影響につながります。特に地域密着型のビジネスやBtoB企業の場合、少数の顧客からの評判が事業に大きな影響を与えるため、大手企業以上に慎重な対応が求められる場合もあります。

 

Q2:過去の投稿も削除要請を受ける可能性はある?

過去の投稿についても、削除要請の対象となる可能性があります。

情プラ法では、削除要請の対象となる投稿について「公開日から◯年以内」といった明確な期間制限は設けられていません。逆に言えば、何年前の投稿であっても、その内容が誹謗中傷や権利侵害に該当し、閲覧可能な状態にある限り、被害者はいつでも削除要請を行うことができると解釈されています。

ただし、削除要請を受け付ける期間について、各プラットフォーム事業者が独自の基準を設けている場合もあります。

 

Q3:自社・自社アカウントへの誹謗中傷や権利侵害に気づいた場合、どうすればいい?

削除要請は義務ではありませんが、積極的な対応をおすすめします。

法的には、被害者が削除要請を行うことは権利であり義務ではありません。しかし、問題となる投稿を放置することで、被害が拡大するかもしれません。例えば、誹謗中傷の投稿が拡散されることで、企業イメージが傷つくなどのリスクがあります。

 

法改正は「他人事」ではなく、SNS運用見直しのチャンス

2025年施行の情報流通プラットフォーム対処法は、一見すると大規模プラットフォーム事業者向けの規制に見えます。

しかし実際には、SNSを活用するすべての企業が意識すべき“新しい常識”とも言える変化です。

炎上リスクや削除要請は、企業規模に関係なく突然降りかかるものです。だからこそ、法改正を「予防的に活かす」視点が重要です。

SNS担当者の属人化を防ぐルール整備、投稿前のチェック体制、トラブル発生時の社内連携——これらを整備することで、ブランドを守りながら安心してSNSを活用できます。

情報流通プラットフォーム対処法の施行により、企業のSNS運用を取り巻く環境は確実に変化しています。法的義務の直接的な対象は大規模プラットフォーム事業者に限られるものの、この変化を単なる「他人事」として捉えるのは危険です。

むしろ、法改正を機に、自社のSNSマーケティングを見直す良い機会と考えるべきでしょう。

これまで「SNS運用は担当者に任せっきり」だった企業も、社内ルールやマニュアルを整備し、炎上や削除要請のリスクを減らすことが大切です。

 

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