コラム

不動産のSNS運用|物件投稿を問い合わせに変える型と宅建業法の表示ルール

最終更新日 2026年9月23日(Wed)

記事作成日 2026年9月23日(Wed)

不動産のSNS運用でいちばん多い事故は、問い合わせに「もう無いです」と返し続けることです。これは接客ではなく法令の問題で、成約済み物件の掲載はおとり広告と判断され免許停止処分の対象になります。対処は成約即削除のルール化と、週1回の在庫棚卸。あわせてターゲットを1属性に絞り、保存率7〜12%を基準に運用を組み立てます。この記事では、4属性のアカウント設計・鉄板コンテンツ7型・業種別KPI・陥りやすい5つの罠まで、物件投稿を問い合わせに変えるための型をまとめます。

目次

執筆:リデル株式会社 SNSマーケティングチーム
SNS・コミュニティマーケティング専門企業。上場企業を含む7,000社超の支援実績をもとに、
SNS運用・インフルエンサー施策の現場ナレッジを発信しています。

不動産SNSで「もう無いです」を繰り返す構造

物件投稿には反応がある。問い合わせも来る。だが返す言葉が「もう無いです」になる。それが続く。ユーザーは離れ、アカウントの信用が落ちる。不動産のSNS運用でもっとも多い事故がこれです。

原因は接客の質ではありません。投稿後の在庫管理が運用に入っていないことにあります。そしてこれは、接客の問題であると同時に法令の問題でもあります。

成約した瞬間、その投稿はおとり広告になる

①問い合わせは来るのに、在庫が合っていない

物件情報は動きます。掲載した週に成約することも珍しくありません。にもかかわらず、投稿はフィードに残り続けます。ユーザーから見れば「今も募集中の物件」です。問い合わせが入り、そこで初めて「もう無いです」と返すことになります。

一度なら事故で済みます。しかしこれは仕組みの問題なので、放置すれば必ず繰り返されます。三度目に同じ返答をした時点で、そのアカウントは「載っている物件がアテにならないアカウント」として記憶されます。保存もフォローもされなくなり、投稿の反応そのものが落ちていきます。

②成約済み物件の掲載は、おとり広告と判断される

不動産の投稿は、SNSであっても宅地建物取引業法の広告として扱われます。成約済み・存在しない物件を掲載していると、おとり広告と判断されます。おとり広告は免許停止処分の対象です。

ここが他業種との決定的な違いです。飲食店で売り切れたメニューの写真が残っていても、法令違反にはなりません。不動産では処分の対象になります。「消し忘れ」で済む話ではないという前提を、運用に入れる必要があります。

③成約即削除をルール化し、週1回の在庫棚卸を回す

対処は2つだけです。ひとつは成約即削除。成約したらフィードから該当投稿を削除し、代わりにストーリーズで「ご成約いただきました」と即報告します。ストーリーズは24時間で消えるため、在庫情報として残りません。しかも成約報告は「動いているアカウント」の証拠になり、次の問い合わせを呼びます。

もうひとつは週1回の在庫棚卸です。過去投稿をさかのぼり、成約済みの物件が残っていないかを確認します。削除の運用が回っていても、担当者が変わった週や繁忙期には漏れます。棚卸を週次の定例に固定してしまえば、漏れは1週間以内に回収できます。

この2つを運用ルールとして文書化し、撮影・投稿・成約報告の担当者全員が見られる場所に置いてください。口頭の申し送りでは、繁忙期に必ず飛びます。

ターゲット属性別のアカウント設計|1アカウントで全層は狙わない

不動産SNSでもうひとつ多いのが、ターゲットの詰め込みです。投資物件・住宅物件・賃貸物件が1つのアカウントに混在すると、どの層からも保存されません。母数を広げたつもりが、結果として誰にも刺さらない状態を作ります。

①4属性で、発信内容も最適な媒体も変わる

不動産のターゲットは大きく4つに分かれます。住宅探し層(ファミリー)、賃貸単身層、投資家層、リノベ層です。この4つは知りたい情報が違い、情報を探す場所も違います。

ターゲット 主要発信内容 プラットフォーム最適化
住宅探し層(ファミリー) 戸建・新築・学区・子育て環境 Instagram+YouTube
賃貸単身層 駅近・1LDK・即入居可・初期費用 Instagram+TikTok
投資家層 利回り・空室率・収益事例 X(旧Twitter)+LinkedIn
リノベ層 中古+リノベ事例・Before/After Instagram+Pinterest

注目したいのは投資家層だけが他の3つと媒体が違う点です。利回りや空室率は数字で判断する情報で、ビジュアル訴求とは相性が良くありません。投資家層を狙うなら、Instagramで頑張るよりXとLinkedInに寄せたほうが効率的になります。

②混ぜると保存率が下がる。分離するか、LPに逃がす

単身賃貸とファミリー戸建を同じアカウントに混ぜるだけで、保存率は下がります。単身者にとってファミリー戸建の投稿はノイズであり、その逆も同じだからです。フォローを続ける理由が半分になるため、保存もフォロー継続も弱くなります。

取るべき形は2つです。主要ターゲットを1つに絞り、他の属性は別アカウントに分離するか、LP(専用ページ)へ誘導して受け皿をSNSの外に置くか。アカウントを複数運用できる体制がないなら、後者から始めて構いません。

「物件アカウント」と「暮らし提案アカウント」を分ける形も有効です。物件情報は今探している人にしか刺さりませんが、暮らし提案は潜在層が見続ける理由になります。役割が違うものを同じ器に入れないという考え方は、媒体の選び方そのものにも通じます(参考:どのSNSをやるべきか|主要プラットフォーム比較と選定基準)。

プラットフォームの優先度|Instagram・YouTube・TikTokの役割分担

全部やると全部が中途半端になります。役割を分けて、優先順位を付けてください。不動産の場合、優先度は次のようになります。

①第1がInstagram、第2がYouTube、第3がTikTok

優先度 プラットフォーム 理由
第1 Instagram ビジュアル訴求と地域性の両立。世界観構築に最適
第2 YouTube 内見動画・周辺ツアー動画で意思決定支援に強い
第3 TikTok 若年層の物件探し起点として急成長中

Instagramが第1になるのは、物件という「見て判断する商品」と相性が良く、かつエリアという地域性を出しやすいからです。第2のYouTubeは、尺の長い内見動画や周辺ツアーを置く場所として機能します。SNSで興味を持った人が、最後に判断するために見る場所という位置づけです。

TikTokは若年層の物件探しの起点として伸びています。賃貸単身層を主要ターゲットに置くなら、優先度を上げる判断もあり得ます。

②投資家層だけはXとLinkedInに寄せる

前章のとおり、投資家層は例外です。利回り・空室率・収益事例といった情報は、テキストと数字で伝わります。画像を作り込むコストを払うより、XとLinkedInでテキスト中心に発信したほうが到達します。

ここを間違えて「投資家向けのリール」を作り続けると、制作コストだけがかさんで反応が返ってきません。媒体は商品ではなくターゲットで選ぶという原則が、不動産ではとくにはっきり出ます。

鉄板コンテンツ7型と、内見動画30〜60秒の2段構え

毎回ゼロから企画を考えると続きません。内容と形式をセットにした型を持ち、ローテーションさせてください。不動産で機能する型は7つあります。

①内容と形式をセットで持つ7型

内容 適した形式
1 物件ルームツアー リール(30〜60秒)
2 室内の寄り写真・建材ディテール カルーセル
3 周辺環境(駅・スーパー・学校) カルーセル
4 エリアの暮らし提案 フィード+リール
5 リノベ事例Before/After カルーセル
6 住宅ローン・税制の基礎知識 カルーセル(教育型)
7 スタッフ紹介・接客スタイル リール

形式まで型に含めているのがポイントです。「ルームツアーをやろう」と決めた時点でリール、「周辺環境を出そう」と決めた時点でカルーセル、と形式が確定します。企画会議で形式を議論する時間がまるごと消えます。

また、型1〜3が物件そのもの、型4〜7が物件以外である点にも意味があります。この比率を意識して回すだけで、後述する「物件情報だけを出し続ける」状態を避けられます。

②5分以上の全部見せは、視聴維持率が10%を切る

内見動画でやりがちなのが、部屋を隅から隅まで映した5分以上の全部見せです。これは視聴維持率が10%以下になります。最後まで見られないので、伝えたい情報が届きません。

取るべき形は2段構えです。SNSには30〜60秒の見どころダイジェストを置き、詳細を知りたい人はYouTubeへ誘導します。SNSは「気になる」を作る場所、YouTubeは「確かめる」場所と役割を分けます。

ダイジェストに何を入れるかは、型1の設計そのものです。玄関からリビングまでの動線、水まわり、収納、窓からの眺め。この4点が入っていれば、60秒でも判断材料としては十分に機能します。

③問い合わせに繋がる投稿と、繋がらない投稿

反応と問い合わせは別物です。いいねが付いても問い合わせが来ないなら、投稿に判断材料が載っていない可能性が高くなります。

繋がらない投稿 繋がる投稿
写真だけで条件情報がない 所在地・専有面積・築年数・賃料を必ず明記する
5分以上の全部見せ動画 30〜60秒の見どころダイジェスト。詳細はYouTubeへ誘導する
物件情報だけを出し続ける エリア紹介・暮らし提案・住宅知識を週半分発信する
徒歩分数を感覚で書く 道路距離80m=1分の基準で正確に算出する

最後の行は表現の問題ではなく、算出方法が決まっている項目です。最寄り駅徒歩◯分は道路距離80m=1分で算出する義務があります。直線距離や体感で書くと、それだけで表示の誤りになります。

業種別KPIの目安と運用体制|保存率・問い合わせ・内見予約

相場観がないと、良し悪しの判断ができません。2026年時点の業種平均としての参考値を置いておきます。不動産は保存率が全業種でも高い部類に入ります。

①保存率7〜12%、物件詳細は15%超えを狙う

指標は1本の流れでつながっている

指標 目安
投稿頻度 フィード週2〜3本、リール週1〜2本、ストーリーズ週3〜5本
保存率 7〜12%(物件詳細は15%超えを狙う)
プロフィール遷移率 3〜6%
問い合わせ獲得率 フォロワー1,000人あたり月1〜3件
内見予約獲得(月) 問い合わせの30〜50%

見るべきはフォロワー数ではなく、問い合わせ件数と内見予約への転換率です。問い合わせの30〜50%が内見に進むのが目安で、これを大きく下回るなら、投稿と実物のあいだに情報の差がある可能性を疑ってください。写真で広く見せすぎている、条件情報が足りない、成約済みが残っている。原因はだいたいこの3つに収まります。

②営業1名・撮影1名・宅建士チェック1名で、週120〜180分

体制の目安を先に決めておくと、こなせない量を引き受けずに済みます。

  • 人数:営業担当1名+撮影担当1名+宅建士チェック1名
  • 週次稼働:120〜180分(撮影60分・編集60分・宅建士チェック30分・分析30分)
  • 必要スキル:物件撮影・室内ライティング・宅建業法知識
  • 撮影タイミング:物件成約前の入居者退去直後にまとめ撮りが効率的

他業種の運用体制と決定的に違うのが、宅建士チェックが工程に入っている点です。週30分を最初から確保してください。ここを省くと、表示義務の漏れが投稿されたまま残ります。

撮影については、広角レンズの過剰使用は誇大広告と判断された事例が出ています。標準画角に近い焦点距離(35mm前後)で撮る運用が安全です。部屋を実際より広く見せる意図がなくても、結果として広く写っていれば同じ判断をされます。

もうひとつ、現地撮影から即投稿の運用はやめてください。誤った価格や、すでに成約している情報が漏れる原因になります。撮影と投稿のあいだに営業部門のクロスチェックを1枚挟んでください。

③引越シーズンから逆算して、1年を先に割る

不動産は季節性がはっきりしている業種です。2〜3月の引越シーズンと、9〜10月の異動シーズンに需要が集中します。ここから逆算して、1年の投稿方針を先に割ってしまうのが定石です。

  • 11〜12月:翌年春の引越向け物件特集スタート、新生活コンテンツ準備
  • 1〜2月:物件詳細投稿のピーク、内見予約導線を最強化
  • 3月:契約フォロー・引越Tips・新居コーディネート提案
  • 4〜6月:エリア紹介・暮らし提案で長期ファン化
  • 7〜10月:投資家向け・リノベ・中古再販コンテンツでオフシーズン対応

オフシーズンに物件投稿を続けても反応は戻りません。需要が薄い時期はターゲットを変える、という割り切りをカレンダーに書いておくと、繁忙期以外の投稿が迷走しなくなります。

陥りやすい5つの罠と、宅建業法まわりの表示義務

症状と対処をセットで持っておくと、現場で早く止められます。不動産SNSで繰り返し起きる5つを挙げます。

①5つの罠と、それぞれの対処

症状 対処
成約済み投稿の放置 問い合わせ後に「もう無いです」を繰り返している 成約即削除のルールを定め、週1回過去投稿の在庫棚卸を実施する
全ターゲット狙いでぼやける 投資・住宅・賃貸が混在しどの層からも保存されない 主要ターゲットを1つに絞り、他は別アカウントまたはLP誘導に分離する
周辺情報が薄い 物件投稿は伸びるがフォロワーが定着しない エリア紹介・暮らし提案・住宅知識を週半分発信する
内見動画が長すぎる 5分以上の動画で視聴維持率が10%以下 SNSは30〜60秒のダイジェスト、詳細はYouTubeへ誘導する2段構えにする
映り込みへの配慮不足 表札・郵便物・近隣住宅が映り込んで苦情を受ける 撮影後チェックリストに特定可能な情報の有無を必須項目化する

5つ目の映り込みは、法令というより防犯と個人情報の問題です。表札、郵便物、近隣住宅の窓。撮影後のチェックリストに「特定可能な情報が写っていないか」を必須項目として入れてください。目視で毎回確認する運用より、チェック項目として固定するほうが確実です。

②全投稿で守る、表示義務のチェックリスト

不動産広告は宅地建物取引業法と不動産公正競争規約で厳格に規制されています。投稿前に通す項目を並べます。

  • 物件投稿に所在地・専有面積・築年数・賃料を必ず明記しているか
  • 取扱免許番号を全投稿のキャプションまたはプロフィールに表示しているか
  • 最寄り駅徒歩◯分を道路距離80m=1分の基準で正確に算出しているか
  • 成約済み物件はストーリーズで即報告し、フィードから削除しているか
  • 写真加工を明度・色温度補正までに留め、現状と乖離させていないか
  • 月1回、過去投稿に成約済み物件が残っていないか棚卸しているか

加えて、表現そのものが違反になる型があります。日本一・最高級・業界唯一などの最上級表現は客観的な根拠が必要です。投資物件で絶対儲かる・利回り保証と書くのは、金商法・宅建業法違反になります。断定を避ける、ではなく書かないと決めてください。

規制の厳しい業種でどう発信を組み立てるかという点では、医療機関のSNS運用|信頼を損なわない情報発信の考え方も参考になります。

③SNSと相性が悪いケースもある

すべての不動産事業者がSNSをやるべきかというと、そうではありません。相性が悪いケースは先に見極めてください。

  • 富裕層向け高額物件専門:オープンなSNSと、顧客の匿名性ニーズが衝突する
  • 紹介・既存顧客中心の老舗:拡散より既存関係の維持のほうがROIが高い
  • 取扱エリアが極端に限定された地方店:Googleマップ・地域広告のほうが効率的
  • 機関投資家相手の投資物件専門:業界誌・展示会・直接営業が有効

また、集客の8割が来店前のGoogle検索から来ている状況であれば、SNSより先にMEOとレビュー対応を強化する選択のほうが合理的です。SNSは万能ではなく、優先順位のひとつです。

よくある質問

①問い合わせは来るのに「もう無いです」を繰り返してしまう

成約即削除をルール化し、週1回の在庫棚卸を回してください。成約済み物件の掲載はおとり広告と判断され、免許停止処分の対象になります。成約時はストーリーズで即報告し、フィードからは削除する。この2つで事故はほぼ止まります。

②ターゲットを絞ると母数が減るのではないか

混在させるほうが保存率は下がります。単身賃貸とファミリー戸建を同じアカウントに混ぜると、どの層からも保存されません。主要ターゲットを1つに絞り、他の属性は別アカウントまたはLP誘導に分離してください。投資家層はXとLinkedInに寄せるのが効率的です。

③内見動画は何秒にすればよいか

SNSでは30〜60秒の見どころダイジェストにしてください。5分以上の全部見せ動画は視聴維持率が10%以下になります。詳細はYouTubeへ誘導する2段構えが基本形です。

④物件投稿は伸びるのに、フォロワーが定着しない

物件投稿は今探している人しか反応しません。潜在層が継続フォローする理由がない状態です。エリア紹介・暮らし提案・住宅知識など、購入前から見てもらえる情報を週半分発信してください。

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